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2017年3月 1日 (水)

三月のしをり

世の中
よのなか

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人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふ故に もの思ふ身は
  後鳥羽院
おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖
  前大僧正慈円
世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ 海人の小舟の 綱手かなしも
  鎌倉右大臣

百人一首の歌にはこのやうに「世」とか「世の中」の語が使はれる歌が多数あります。憂き世を厭ふといふ厭世的な表現もありますが、世を思ひ、世の平安を祈らずにはをられないといふ詠み人の念を感ずることができます。

 「この漂へる世をつくり固め成せ」との命をうけて伊邪那岐・伊邪那美二柱の神が国生みをされてより、世を思ひ、これを固め成し、またその平穏と繁栄を祈ることがわが國の深い伝統のなってゐることが知られます。

 しばしば「祖先崇拝」「自然信仰」が神道の特色と捉へられますが、それは表層的な見方です。神道には「世を思ひ、世を祈る」といふ重要な特色があります。「よ」のはたらきは「かみ」のはたらきの根本的な要素です。

 ルソーの社会契約論においては「一般意志」(ボロンテゼネラール)といふ概念が説かれます。鎮守の杜を保全し、氏神様のまつりを繼承してきた地域社会の営みを支へてきた人々の信条は、これに近いものがありますし、天皇を「国民統合の象徴」とするのも、単なる全体意志ではなく、「よ」の思ひを繼承してきた日本人の先祖から繼承された「総意」なのであります。
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